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70年の伝統を誇る木下彫刻工芸は、だんじり彫刻を中心に木彫刻を手掛けています。木材の厚みを最大限に利用し、迫力ある彫刻物を製作した先代・木下瞬次郎氏は『だんじり彫刻の祖』と呼ばれており、その作風を受け継いだ、現在の彫刻師たちもまた、圧倒的な緊迫感を彫刻物に注ぎ込んでいます。
有限会社 木下彫刻工芸
岸和田市尾生町2681-7
従業員数10名
URL: http://www.horishi.jp

彫刻師 原 宜典(よしのり)さん(27歳)
今にも動きだしそうな、迫力ある、だんじりの彫刻物。木下彫刻工芸で働く9年目の若手職人、原 宜典さんは、彫刻と向き合い『深く彫ること』を念頭に、修行の日々を送っています。
より緊張感を求めて彫る。
「ケヤキを深く彫って、周りを落としていくと、彫刻物に緊迫感や迫力が生まれてきます。この深さが木下彫刻に受け継がれてきた技術です」
現在、木下彫刻工芸が手掛ける製作物の約9割がだんじりの彫刻物。毎年、秋になると50万人以上の見物客が、岸和田市を訪れます。
目的はもちろん岸和田だんじり祭。戦国武将の彫刻物を飾り付けた重さ4トンのだんじりが、曲がり角を鋭角に方向転換する姿は圧巻の一言。岸和田で生まれ育った原さんも、幼いころからだんじり祭に参加してきたそうで「少しは岸和田に貢献できているのかな」とはにかむ。

キッカケは直感だった。
17歳のとき、『何か打ち込めることを見つけたい!』『自分は何がしたいんだろう?』と悩んだ原さん。子供のころから、ものづくりが好きだったこともあり、毎日通学の途中で見かけていた木下彫刻工芸を興味本位で訪れたそう。
「職人たちが黙々と戦国武将の合戦や、神話をモチーフにした彫刻物を彫り上げていく姿に『スゴイ! 面白そう!』と直感でビビっときました。すぐに親方に働かせてください、と頼んだのですが、『人がいっぱいだ』という理由で断られてしまいました。でも彫刻に興味がわいて、その日から毎日、作業の様子を見学させてもらっていたんです。それから2週間ほど過ぎたころに親方が突然『やってみるか?』と言ってくれて。嬉しかったですね」
彫刻と向き合う。

まじめな性格で、ゆっくりと着実に実力を付けていった原さんですが、21 歳のときに木下彫刻工芸を一度退職してしまいます。「若気の至りと言いますか、遊びたかったんです。退職してからは、家業を手伝いながら1年ほどフラフラ遊んでいました」
再び、「自分は何がしたいんだろう?」と考えた結果、思い浮かぶのはやはり彫刻しかなかったと言います。「親方に頭を下げて復職させてもらいました。そこからは『自分には彫刻しかない』と。真剣に彫刻と向き合うようになりました」
今では、親方が「たまに感心する、良い彫りをする」と認めるまでに。
「彫刻には良くも悪くも『自分』が表れます。だから、普段から自分が納得いくものを彫るように心掛けています。こだわると時間が掛ってしまうんですけど、彫刻ではもう妥協したくないんです」
現在の目標は、「親方や兄弟子のように深く掘ること」。今にも動きだしそうな彫刻物を目指して原さんは今日もケヤキを彫ります。